あたしは有紀の死体を目の前にして呆然と座り込んでいた。


有紀の血肉で教室中は鉄の匂いが充満している。


「奏」


続があたしの肩に手をかけた。


「続……」


少し振り向くと、自分の体が小刻みに震えていた事に気が付いた。


うまく続を見る事もできない。


窓の近くにいた千鶴が声を上げて泣き始めた。


それをスイッチにしたように真と信一が教室の机をひっくり返し、壁を叩いて「ここから出せ!!」と、怒鳴り始める。


「有紀……が……」


「あぁ……」


続は自分の上着を脱ぎ、有紀の死体の上にかぶせた。


ひどい状態で死んで行った有紀の苦痛の顔が、隠れる。


「有紀が……有紀が!!」


そう言いながら続にしがみつくあたし。


続はあたしの体を強く抱きしめてくれた。


でも、その手も小さく震えている。