「なんかさ、さくらんぼってふたつ揃ってないと魅力ないよね」

突然そんなポエミーなことを言い出す幼馴染みとは15年間ずっと一緒。産まれた病院も保育園も小学校も中学校もずっとずっと一緒だった。


「ってか部屋に入るときはノックしてくれない?着替えとかしてたらどうすんの」

「はは、今さら。風呂だって一緒に入ったことあるじゃん」

「……」

いつの話だよ、と思いながら私は読みかけのファッション雑誌を閉じた。幼馴染みのこいつの名前は“八島 瞬”(やじま しゅん)

数字の八があるから私はハチって呼んでる。


「ナナ~。そういえば数学の宿題……」

「ちょっとポテチこぼしてる!そこにコロコロあるからちゃんとやってよね!」

「はいはい。んでさ数学の宿題見せて?」


ハチは暇な時と宿題写させてほしい時は必ず私の部屋に来る。私のお気に入りのクマのクッションを枕にしてお菓子食べたり漫画読んだり。


「今日の夕飯なにかな~?」

勿論これはうちの夕飯のこと。

親同士も仲よしでハチがこうして家を出入りしても何も言わない。むしろ3日ハチが来ないだけで「喧嘩したの?」と言われる始末。

ハチは幼馴染みだけどうちの家族として認識されている。