高校3年生の夏は、早い。

毎週のように行われる模試。

その結果を見る度に一喜一憂。

夏休みのはずなのに、毎日のように学校で顔を合わせるクラスメートたち。


「……はぁ。この前の合コンも失敗だった」


眩しすぎる空を睨んで、ナッチが言った。

クーラーの効きすぎた教室と、灼熱の太陽に照らされている外は、同じ夏とは思えない。

今年はみんな、肌も白いまま。


「なべっちと平瀬くんが主催の…?」

「そー!いい男の周りにいい男あり、って信じて参加したのに、何かみんなチャラいんだもん~。一夏の相手、なんてあたしは嫌~~」

「ナッチ、前は一夏の恋でもいいって…」

「なわけないじゃん!本当は永遠に続く愛を探してるに決まってんじゃん!どうしてこんなに努力してるのに彼氏出来ないんだろ~~~!!」


確かにナッチの努力は凄い。

あたしは途中であきらめたダイエットも、ナッチは見事成功させた。

病院搬送事件以来、落ち幅はぐんと減ったらしいが、目標のマイナス5キロはクリアして、今もそれをキープし続けている。


「髪も、ネイルも、肌も全部、完璧なはずなのに~~~!!」

「完璧すぎるから、ダメなんじゃね?」

「―――、」


すっかり黒髪が板についた安川くんが口を挟んだ。


「なんだって?ヤス」


ナッチの目が据わる。


「あっ、いや…。うん。有野が必死だから言わないでいたけど…。男ってさ意外と本気になる子って素朴でギラギラしてなくて、守ってあげたい雰囲気の子だと思うんだけど」


安川くんはナッチから視線を逸らしたまま、恐る恐る言った。


「……んなのあんたの好みでしょ?」

「いーや。意外と的を得てると思うぜ」

「桜田!」


景山先生に家まで迎えに来られたと嘆いていた桜田くんが、そこに顔を出した。


「はぁ~?桜田が言っても説得力ないよ~」


ナッチは聞く耳持たず。


「な?こーゆーとこが彼氏を逃がしてる要因ってやつ?」


桜田くんがあたしの耳元でこそりと言った。


「で、チェリーちゃんはその後どうよ?アンドーとえっちした?」

「!!!」


さらっと言う桜田くんに、ナッチも顔を上げた。