その週末、ずっとこの心のもやもやを考えたけど、答えは出てこなかった。

次の週、ナッチに誕生日プレゼントについて打診した。


「…そうねぇ~」


恋愛の先輩も、小さくため息を零して歯切れが悪い。


「確かにずっとあのピアスはしてたよねぇ。外し忘れ、ねぇ…」

「でもでも!ありえそうじゃない!? 安堂くんって妙に無頓着なとこ、あるしっ」


悪い方向には考えたくない。

考えてしまったら、もうそのことしか頭の中になくなってしまいそうで怖い。


「そうねぇ~…」


それでもナッチは、「そうだね」とは言ってくれなかった。


「でも安堂くんは…」

「それは絶対女、だね」

「!」


ナッチの言葉を遮って、またまた真上から声が落ちてきた。


「さ、桜田くんっ!!」

「なんだよ、小林~!土日元気がねーなぁって思ってたら、カレシのことで悩んでたのかよー!俺に相談してくれたらよかったのにー!」


軽いノリのその人は、豪快に笑った。


「やっぱりそれって昔の女からもらったものだと思わねぇ?」


桜田くんは椅子に座り、斜めに傾けて、あたし達を見た。

それを聞いてナッチは顔を歪めた。


「あたしもそれは思ったけど、でも!あん…、知枝里の彼氏は彼女がいたなんて話聞いたことないのよっ!」

「――、」


ナッチの言葉に、ズキッとする。

ナッチも知らない事実を、ナッチにも言えない事実を、あたしは知っている。


「ホントかぁ~?それ。誰にも知られちゃイケナイ、禁断の恋とかしてたんじゃないの~?」


桜田くんの言葉がズキズキと心臓をえぐる。


「そこはちゃんと聞いてた方がいーと思うよ?チェリーちゃん」

「!」


桜田くんがニカッと笑った。

ちぇ、チェリーちゃん…!?


「絶対そんなことないと思うけど、ちゃんと聞いておいでよ!」