「…で?」
土曜日午前7時半。
玄関に立つ私は当然ながらまだパジャマで。冷えきった空気に身震いする。
どうして、私が、休みの日のこんな時間に、起こされなくちゃいけない?しかも寒いしっ!
そんな苛立たしさを隠すことなくぶつけてみるけど、私を叩き起こした張本人は無表情で私を見下ろしている。
「とりあえず入るぞ。ここで騒ぐと華月が起きる…まだ寝てるだろ?」
そう言うとたっくんは靴を脱いでリビングへと歩いていく。ここはあんたの家ですかっ?
確かに、はーちゃんはまだ寝てる。
そしたら、はーちゃんは寝かしてあげるのに、私は起こしてもいいってどういう了見なんだ!?とその背中を睨み付けるけど、見えてないたっくんは何も感じないだろう。まぁ、見えていても意にも介さない人だけど。
静かにドアを閉めてたっくんを追いかけると、彼は勝手にエアコンのスイッチを入れ、更にキッチンでお湯を沸かしていた。
「たっくんには敵わないなぁ…」
諦めを込めてそう呟くと、聞こえたらしいたっくんが振り返ることなく口を開いた。
「オレも、オマエたちには敵わねぇよ。」
「そう?寒いから着替えてくる。」
私は部屋に戻る。
着替えながらふと鏡の中の自分と目が合う。
たっくんは、どうしてはーちゃんじゃないとダメなんだろう?
ポンと浮かんだ疑問。
同じ顔だけど同じに見えないんだから、私じゃダメなんだよねぇ…
「なーんて。私、たっくんはタイプじゃないし。」
嫌いじゃないけどね。
むしろ、好き。
家族として、だけど。
だから、大好きな二人がさっさとくっついて幸せになってくれたら嬉しいんですよ。
鏡の中の私に、ね?と同意を求めて部屋を出る。