「また、寂しく東京の街をエアデート?」

「エア言うな、散策だから!」

「はいはい、じゃあね」

「もー、また明日ね!」

親友に手を振り、校門で別れた放課後。
私、七海 来春(ななみ こはる)は先月、花の高校生となった。

時刻は15時30分、まだ日も高い5月。
あっという間に桜は散り、新芽が木々の隙間にちらほら見え始めているこの温かい季節こそ、お出かけ日和だなと思った。

これは、一人東京散策をするしかないと、強い使命感に駆られる。だがしかし、間違ってもエアデートなどと、悲しい妄想故の行動じゃないことは言っておきたい。

そう決めたら、即行動なのが私のモットーで、早速高校から徒歩10分ほどの距離にある駅前ショッピング通りにやってきた。

ガラスウィンドウから覗くピンク、黄色、クリーム色といった淡い系統の春物ワンピース。香る誰かの香水の匂いに、香ばしいクレープの焼ける匂い。

──くぅっ、テンション上がるぅ!

この都会の華やかさは、私の繰り返されるつまらない日常を少しだけ変えてくれる気がする。

「あ、あれ新作のミント抹茶マキアート!」

衝動的に若者で溢れかえるコーヒー店に入り、迷わず新作をテイクアウトした。

さっそくゴクンッと一口飲めば、何とも言えないグロテスクな味が口内に広がる。

思わず「おぇっ」と吐きそうになった。