「じゃ、気をつけろよ。なんかあったら連絡して」
そう言ってポンッとあたしの頭に手を置いたお兄ちゃんに、先ほどまでの怒りを忘れて微笑んだ。
「ありがと!お兄ちゃん。行ってきますっ」
笑って手を振りつつ、あたしは沢山の人が行き来する横断歩道へと足を踏み出した。
◇
「……というわけで、今日から転校してきた華沢(はなざわ)さんです。自己紹介お願いできる?」
1年B組、そう書かれた教室にて。
教壇の横で、人生でもう何度目になるかわからない転校時の挨拶をする。
「はじめまして。華沢 詩姫です」
そう言ってぺこりと頭を下げる。
何故かポカンと口をあけて固まっているクラスメイト達に、首をかしげていると、先生が優しく微笑んでくれた。
「はい、ありがとう。華沢さんの席は窓側の一番後ろだから、そこに座ってね」
「はい」
先生に微笑み返してから、あたしは指定された席についた。
チラチラと好奇のような目を向けられ、居心地が悪く落ち着かない。