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大学を出て、夢も何もなかった私は



特に理由もなく、



適当に決めた会社に入社した。




入ってからの1年は



バタバタして過ぎていき



今年の春、2年目を迎えた。




「町田さん。今年あなた新入社員の指導担当ね」



「えっ?!?!」




突然すぎる発表にアタフタしてしまう。




「そういうことだから。よろしく」




塚本さんは、去年私の指導担当だった



すごく綺麗な先輩。



綺麗だけど、媚びてなくて



いろんな人から好かれてる。




「え〜」



デスクで1人呆然とパソコンの画面を見つめる。



指導なんて出来ないし。




「は〜」




何度もため息が漏れて頬杖をついた。




「どうしたんですか?」




1ヵ月前くらいに転職してきて、



私のお隣さんの山岸さんが笑いながら



話しかけてきた。




そういえば、喋るの初めてだ。




仕事の事では話すけど、



こういうちょっとした会話は初。




「今年、私指導担当らしいんですけど・・・
教えられる自信なくて」




「緊張してんの?大丈夫ですよ。」




いっつも怖い顔してるくせに



笑ったら八重歯が覗いて可愛いじゃん。




思わず、山岸さんの顔を凝視してたら、




「何かついてます?」



って、またいつものこわい顔。