「はい、ですから〜この問題は〜」

数学の授業。


ペタッ

クラスの誰もがウトウトしている中、彼はいつものように背後からやってくる。


背中に何かをつけられた違和感を感じ振り返る。



「…春瀬くん。今なんかしたでしょ」


大きな目で、ニコニコしながら遠くを見てる後ろの席の彼に小声でそう言う。



「えー?別に〜」
と彼。


春瀬 奏(はるせ かなた)くん。


高校生になって初めて同じクラスになった春瀬くんは、何かと前の席の私にちょっかいを出してくる。


私は違和感を感じた肩甲骨辺りを手で触る。



やっぱり何か付いていた。



必死でとったそれを、手にとってみる。



シールだ。


それも

『70円』

とシールに手書きの文字で書かれていた。


きっと春瀬くんが書いたんだろう。