カラン、コロン、、


鐘の音が軽く響いた。

扉を開け店内に一歩入る。
いつもの香りが漂っていた。

「んー、いい香り。」
「そんな顔されたら嬉しくなりますね。」
くすっといつものカウンターから笑顔を向けてくるのは六車だった。
「どうぞ。美味しいコーヒーを淹れましょう、少し座っててくださいね。」

「入って、いいの?」
ここまで来ておいてなんだけど、入っていいものかどうか、躊躇われた。
きょろきょろと店内を見るとカウンターに先客がいた。
「どうぞ。」
六車はそのカウンターを示した。
「だって、あたし、、」
だって、あたしはもう、忍者じゃないんだから、、だから、ここに来てはいけないはずで、、

「お先に、頂いています。」
カウンターの客がこちらを振り返り、メガネをずりあげた。

「三田、、さん?」

「はい。」
間の抜けたような返答が彼らしかった。

「お先にって、、ぁ、、」

ぴんと来た。