「ぉっと。」

店を飛び出した希代香に、次郎は再び隠れて護衛で付いていた。

手持ちの箱はひとつに減っていた。

郷太の言っていたケーキをNに届けて来たのだろう、と推察した。

残りの箱を大事そうに抱え小走りを続けている。携帯を取り出し、どこかに掛けた。

『おいおい、忍者の修行で口元を隠せと習わなかったのか?』
次郎は目を凝らし、彼女の唇の動きを読み取った。
『なるほど、これから向かうのは頭首の家か。
じゃ、もうひとつの箱は祖父母への。

それにしても、、』


次郎は少し呆れ気味に彼女を見た。
『狙われてる自覚はあるのか?
何をあんなにきょろきょろしてるんだ?』