「黒騎士よ、今日からお前は余の物だ!」

黒いマントに禍々しい服頭には角のようなものが生えているように見える美少女が、俺を自分の物だと言ってきた、その瞬間意識が戻った……

「夢か」

そう言って彼は体を起こした、どうやら課題をしている途中で自室で寝てしまったらしい、彼は眠気を覚ますために近所のコンビニに向かった、田舎と言えば田舎であるため街灯はあまり無く、夜も更けている、暗い夜道を歩いて五分ほどで、コンビニに着くとエナジードリンクとパンを買って店を出た。

「彼女欲しい……」

そっと誰もいない夜道で彼は呟いた、そんな事を考えながらフラフラと歩いていると前から人影が見えた、だからと言ってどうとしたわけでもないのでそのまま横切りすれ違うとその瞬間、自分の腹からは血が出ていた、次の瞬間激しい痛みが体を襲った、しかし彼の体は動かない、彼はそのまま倒れた、徐々に痛みが消えていった、それと同時に体の熱は奪われ、意識は朦朧となっていく、そして、そこで意識は途切れた。

目を覚ますがよい………

突然頭の中に声が入ってきた、なんだかわからないが、目を開くとそこにはピエロのような格好をした青年が目の前に立っていた、彼は得意気に満面の笑みで話かけてきた。

「君、通り魔に刺されて死んじゃったみたいだよ、気の毒だねぇ~」

小馬鹿にしたように話かけてきたその顔を見た瞬間、無性に腹が立ち、そいつの顔面を一発殴った、ソイツは何が起きたのか分からない顔をして文句を言ってきた。

「ちょ、ちょっと待ってよ、別に僕が君を殺した訳じゃあないよ、それにただ真実を述べただけじゃあないかぁ~、分かった悪かったよ、別にバカにしたかった訳じゃあ無いんだ、実は君をこれから異世界に転生させようと思いまぁーす」

遊び人のようにノリノリで話を進めるソイツはいきなり話を進め出した。

「ちょっと待て、まずここは何処だ、そしてお前は誰だよ、勝手に話を進めるなよ、まずはどう言うことか説明しろ」

俺が口を挟むとソイツは忘れてたと言うような顔をした。

「これはこれは失礼、まずは自己紹介から、僕の名前はロキ、神様の一人だよ、ちなみにここは僕の部屋の1つだと考えてくれればいいよ」

これは驚いた、神様などいるとは思っていなかったが、この訳の分からない空間みたいな所にいる以上は信じざるを得ない、どちらにせよ信じないと話を進めてくれそうにない顔をしていたので、とりあえずは信じよう。

「そして、偉い神様である僕は暇潰しに地上を見てたら、君が刺されて死んでいるところを見たから、僕の気まぐれで生き返らせることは出来ないけど、異世界に転生させるぐらいならしてあげようと思ったのさ」

そう言うとロキはどや顔でこちらを見てきた、当然転生出来るなら願ってもないと思った俺は転生を望んだ、ちなみに転生を望まなかった場合俺がどうなるのか聞いて見た所……

「それなら、君の魂をずっと男子トイレにでも縛り付けて、地縛霊でも作って楽しむつもりだったんだけど、まぁ、君が望むなら仕方ない」

と少し残念そうに言っていたが、本当に偉い神様なのだろうか……、たちの悪さなら恐らくトップクラスの神だなと俺は思った。

「じゃあ、せっかくの異世界転生なんだから、僕からは特別に特殊能力通称《スキル》を授けてあげるよ」

前言撤回、メチャメチャ良い神様じゃあないですかぁー、ちなみに貰えるスキルは基本スキルを抜いて全部で三個、九種類の中からランダムで貰えるらしいのだが、どのようなスキルなのかすら、分からないらしい、なら何故九種類だと分かるのかと言うと神である自分には分かるが教えてることは禁忌とされているとのこと、まぁ、どうせ得られるのだから得てからじっくり考えれば良いそう思うことにした。

「そう言えば、まだ、名前を聞いていなかったね」
「ん?、あぁ、俺の名前は[西川 里輝]神様ならそれぐらい分かるだろ」
「ニシカワ サトキくんだね、いやー、確かに分かると言えば分かるんだけど、プライバシーの侵害かなってね!」

この神が言うと説得力の欠片も感じられない、そう思った里輝だが、ここは堪えた。

「そうだ!折角だから、異世界にちなんだ名前に改名しようよ、僕が付けてあげるからさ」
「まぁ、その方が良いかもしれないな、お前が付けるのは却下だが」

駄々をこねる神を無視して自分なりに考えた、最初は天使や悪魔などの神話から取ろうと思ったが、向こうの宗教関係が分からない以上下手な名前は付けられないかといって、日本人のような名前は間違えなく浮くだろう、考えた末にソエルと名乗ることにした。

「なんと言うか、普通の斜め上を突いたような中途半端な名前だね」
「うるさいな、自分の名前なんだからいいだろ」

やれやれとロキは手を横にあげて首を振るが、自分の名前ぐらいは何処の馬の骨とも知らないやつには付けられたくは無いと思っている例え神でも…

「じゃあ、そろそろ転生するけど、他に何か質問はあるかい?」
「そう言えば、転生すると言うことは記憶は残ったまま人間になれるんだよなぁ、どうせならイケメンにしてくれないか?」
「あー、ごめんね、記憶は残ったままだけど、人間にはなれるか分からないよ、うん……」
「え?」

なんだと、人間以外に生まれ変わるって事もあると言うことか、それならまだ、男子トイレの霊の方がマシかもしれない、カナブンとかGに成る可能性もあるならやっぱり転生は止め……

「転生完了!では、良い来世を……」
「ちょっと待ってぇぇぃぃー―~……」

あり得ないほどの眠気に襲われ、だんだんと意識が遠退いていくと同時に自分の体が黒い光となって消えていくのが分かる。

そして転生者を見送った神は空を見上げ祈るように手を重ね膝を着く。

「頼んだよ、ソエル、君は魔界を救う勇者と成るんだ、君が僕が魔界に送ることのできる最初で最後の希望なんだから」

ロキは振り返り、自身で作り上げた疑似空間から出ていった。