《視点 大神秋人》

周りの迷惑顧みず、燈子が里帰り出産を取り止めを決意した次の日の東京、大神家。

そんな事とはつゆ知らず、大神秋人は3時に外から戻った姿のまま、閑散とした26畳リビングダイニングのソファに凭れ、ぼんやりと空を見つめていた。

 
『よっ、ナイスショット!サスガは…』
今日、何回発した言葉だろうか。

このクソ寒い休日に何の因果か接待ゴルフ、気が知れねえ。

一緒に回ったのは取引先の社長とメインバンクの頭取。
常に、相手のスコアのオーバー10~15で回れる俺はハッキリ言って天才だが、その器用さが悔やまれる。

もてなす相手の階級(ランク)が変わっただけで、エラくなってもやっているコトは、下端の頃とそう変わりはないものだ……

燈子が居なくなって丁度1週間が経っていた。
深夜まで仕事をし、その合間に夕食を外で済ませ、フロに入って洗濯機を回してから眠る。
至ってシンプル、かつ楽チンな生活を送ってはいるが……

一人寝だけはどうにも慣れねぇ。