熊野と飲んだあの日から数え、2ヶ月ほどがたった11月終わりの頃。

その日、遅くに仕事から帰った俺は、慄然とした。

玄関先で、奥さんが両手を突いて突っ伏していたからだ。

「うう…」
「どうした燈子!」

俺は慌てて駆け寄った。

「ハラがヤバイのか?ガキが出そうなのか?
あああ…どうしよう、早く病院に…」

ウロウロと狼狽える俺のコートの裾を引っ張り、燈子が足下から弱々しい声を上げた。

「違うんですよぉ~、秋人サン」
「え?」

食後のリビング。

「実はね、今日ニンプさんの定期検診に行ってきたんですよ……」

ソファに腰かけた彼女は、ルームパンツの裾を上げた。

「ね?ムクんでるでしょう?」
「ホントだ……」
 
彼女の脛をプニッと圧してみると、確かにくっきりとその痕が残る。
「面白いな」

物珍しさに何回もプニプニしていると、

「ちょっと、止めて下さいよ!」

彼女は慌てて裾を下ろしてしまった。

「それで…一体何を打ちひしがれていたんだ?」

「あのね…」