「はぁ?」

彼がこちらを睨めつけながらでそう答えた。

当然だ。

泣きそうな顔をしていたのに急にすまし顔でごめんなさいだ。

誰でもそうなる。

「わかってたよ」

私は彼をこれ以上怒らせないように注意しながらそう答えた。

「なにが?」

彼は呆れているように答えた。

「学が疲れてたの知ってた。だから私は学を元気付けてあげたくて、夜電話がしたかった」

私は彼と目を合わせようとした。目を合わせてくれない。

「ふーん」

学はまるでこちらの話を聞いていない。

「私は...」

私が喋っている途中にも関わらず、彼は深くため息をつくと机に右手をつき、ゆっくりと立ち上がると椅子を綺麗に直してポケットに手を入れると歩きだした。

なんで

「なんで!!」

彼の足が止まった。

「まだ私のこと、まだ好きなんじゃないの?なんでそんなに私と別れたいの?」

私は大きな声で彼に言った。

彼はまた歩きだした。

ヤバい。このままじゃ変えられない。

「私、変わってないよ」

彼はジュース2人分の会計をしている。

まるでこちらの話を聞いていないようだ。

聞こえているはずだ。

なぜ反応してくれない!!

「変わったのは学だよ!!」

私は今までにないほど大きな声で言った。

彼の体が少し横に揺れた。

彼は会計を済ませ、外に出ていってしまった。

小さな変化はある。だが、結果が変わらなきゃ意味がない。

逃がさない。

逃がしたらだめだ。

私は走って彼を追いかけた。


右手にナイフを持って。