グラウンドの木が色づいてきた10月の放課後。
杏奈は朝から何度目かのため息をついていた。

あの日から美穂とはもっと仲良くなり、藤崎くんのことは避けるようになった。

「杏奈〜?幸せ逃げるよ〜?」

「もう幸せなんて残ってないよ〜…」

「えー?笑」

「藤崎くんに幸せと私の生きる気力を吸い取られたかもしれない…」

「瑞江に頼んで返してもらえば?」

「恭太にー?やだよ〜笑できればもう話したくないし〜」

「えー。なんで?」

「だってさー。まぁ、嫌なものは嫌なのー!てか、文化祭明日からだよね〜?」

「うん…カフェでしょ〜?しかもメイド&執事カフェっていうどーなのよ…」

「やだよー…」

「杏奈も接客?そりゃそうか…」

「えー?」

「杏奈が接客やらなかったら営業成績ガタ落ちなのー!笑」

「い、いひゃい。みひょ、いひゃい…」

「みひょって爆笑」

「もう!」

「杏奈ちゃーん!美穂ちゃーん!」

「げ…藤崎くん…」

「俺もいるよ。蓮の影になってただけであって。」

「うわ。瑞江まで…」

「「2人とも、反応ひどくない?」」

「最悪だ…」

「美穂ぉ〜…帰れないじゃん…」

「よし、無視しよ!」

「うん!美穂ー!今日、クレープ食べよ!」

「駅前の?また?」

「アイスにするー?」

「それも食べた。」

「えぇ…うーん。」

「じゃあ、ウチくる?」

「美穂の家!?行く!行く行く!絶対行く!」