ケータイ小説 野いちご

その時にはもう遅かった

おまけ●序の口だった

***おまけ●序の口だった



これも罠か?

向い合わせで座るかと思っていたのにまさかのカウンターだった。

「お待たせしましたー!」

賑かな店内で威勢のいい声が響く。

私はと言うと、控えめに両手でジョッキを握りながら一口ずつビールを口にして周りの様子を窺っていた。

特に右隣の要注意人物を。

「神崎さん、焼き鳥どうぞ。」

「…どうも。」

結局誘いを断れなかった私はついに夏目くんと飲みに来てしまったのだ。

しかも明日は土曜日で仕事を理由に帰るのは不可能。

大して弾まない会話に居心地の悪さを感じながら過ごし初めてどれくらい時間が経ったのだろう。

でも。

ちらりと横を見れば当たり前のようにいる夏目くんの姿に気付かされることがいくつかあった。

食べ方がきれい、喉仏とか捲られた袖から見える腕の筋肉とかも男らしくてちょっとドキドキする。

髪型も短めで清潔感があって私の好みだったりするし、ふわりと鼻を掠める香水もど真ん中。

「なに?」

声の低さもちょうどいいんだよな、とか考えていたらガン見に気付かれてしまった。

「え?いや、よく食べるなと思って…。」

その感想はとっさに出たわりには私の本心を表していた。


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