そしていよいよぼくの番がきた。
ぼくは夫婦を選ばないと決めた。
そして生まれた先は、ぼくの存在にすら気づかなかった女性の下で、そこでぼくが必要とされることはなかった。
自分で決めたものの、それはやはり居心地がよく落ち着くとは程遠い場所だった。
ぼくはずっと考え続けた。
老師の言った、自分を愛し必要としてくれる人とは出会えるだろうかと…。
それから1年半と少しが経った頃。
ぼくを「大好きよ」と抱きしめてくれる人に出会った。
そして「今週末必ず迎えに来るからな」と頭を撫でてくれる人に。
愛し合う夫婦、新しい両親だった。
なにかほっとしたものがぼくを包んだ。
老師の言葉は嘘じゃなかった。
住む場所や生活リズムが変わるのは苦しかったけれど、それも少しの間だった。
地球でのものの使い勝手はよくわからなくて、失敗しては母ちゃんに叱られてばかりだけど、言葉がまだおぼつかないぼくが「だいじ」だけはっきり言えるのは、自分が大事だとちゃんとわかったから。