「おいっ」


田嶋さんと付き合い始めた日、家に帰ると玄関の前であおいが立っていた。


「なんで電話もメールも無視やねんっ」
「ごめんごめん」


適当にあおいを交わしながら鍵を開けて扉を開く。あおいは何の遠慮もなく俺のあとに続いて家に上がる。


「ごめんちゃうやろ、理由聞いてんねん!」
「あー……なんか面倒で」


そのまま廊下を歩くとリビングに入り冷蔵庫を開けた。

ペットボトルの水を直接飲む。
あおいはそんな俺を納得がいかないような目で見ていた。


「……なんで日野さん以外の女の子と付き合ってんねん」


田嶋さんと付き合い始めたのは今日の昼休みのことなのに、もうあおいのクラスにまで噂が広まっていたらしい。

まあ、じゃないとあんなに連絡よこしてこないわな。
珍しく教室にも会いに来たらしいけど、避け続けてたのに、家にまでやって来るとは。