「やっほー雄大!」


夏休み最終日、ゆっくり昼まで眠るつもりだった俺を起こしたのは、小二からの付き合いのあおいだった。


「勝手に部屋入って来んなよ」
「だって鍵かかってなかったし、それに部屋入る前ノックしたで。それより宿題写させて!明日学校やろ?」


最早聞き慣れた大阪弁を話すあおいは、小二のときに大阪から転校してきて以来、ずっと一緒に居る男。

何年も東京に居るのに標準語に染まらないあたり、こいつの性格が出てると思う。


「宿題?……またやってねぇのか」
「夏休みの宿題なんか最終日にやるもんやからな」
「お前の常識は世間とズレてるよ」


そう言いながらもベッドから起き上がり、机の上の、七月中には全て終わった課題を持ち出す。

あおいに渡すとニカッと歯を見せた。


「ありがとう!すぐ写すから」
「俺の部屋でか」
「当たり前やん。終わったら遊ぼうや」


膨大な量の課題を今日中に写し終えるつもりのあおいには驚くが、俺の机の上でひたすら写しているその手のスピードにはもっと驚く。

こういうときは考えたら負け。ひたすら写すことに集中しなければ。……あおいの格言だ。

その情熱をもっと他に向けるべきだと思う。