ビニ傘なんてどうでも良かった。
捨ててくれてたって全然構わなかった。

……そんなものはただの言いがかりに過ぎなかった。


だったら何故わざわざ日野ちゃんの家にやって来たのか。

それは、前に言っていた日野ちゃんの初恋の人、日野ちゃんのお兄ちゃんのことも気になったし。

夏休み一回も会わないような、そんな浅い関係じゃない、と思いたかったから。


一体何なんだ俺は。

俺はただの日野ちゃんの奴隷。
言いなりにしかなれないのに。


……本当に俺は、おかしいと思う。



「もう暗くなってきたね」
「本当だ」
「帰れば?」


お兄ちゃんには結局理由も教えてもらえずに会わせてもらえなかったし、本当に日野ちゃんに数学を教えただけで終わった。

……こんなことしに来たんじゃないのに。