ミンミンミンと蝉が暑苦しく喚く夏のある日。

ダラダラと滴り落ちる汗を首にかけたタオルでふき取って、あたしはため息を吐いた。


真夏のこんな暑い日に、しかもこんなカンカン照りの真昼間に、数年前卒業した懐かしの小学校の校庭にいるのは、自分の意思なんかじゃない。

すべては我が姉上のため。


「お姉ちゃん、本当にこの辺なの?」

「たぶん?」


姉上の物忘れがひどいためだ。


「もう、自分達のタイムカプセルの場所くらいちゃんと覚えておいてよ!」


あたしが小言をつくと「ごめん、ごめん」とニコニコと美しい微笑みを浮かべて謝るけれど、まるで気持ちがこもっていない。


お姉ちゃん達の学年は小学校を卒業するときに校庭にタイムカプセルを埋めたそうだ。


それでお姉ちゃん達が二十歳になる今年の夏、集まったメンバーでタイムカプセルを掘り起こすことになったらしい。

集まったメンバーはお姉ちゃんを含めても、たったの4人。クラスは20人いるはずなのに、だ。まあ、真夏の炎天下で肉体労働したいなんて思うやつはそうそういないだろう。

集まったメンバー4人の中で、埋めた場所を覚えていたのはお姉ちゃんだけだった。ほかの3人は「さっぱり分からない」そうだ。

しかしこの姉、困ったことに物忘れがひどくて「あんまりよく覚えていないかもー」なんて言いだしたからさあ大変。

こうなったらそこら中を掘り起こすしかないとなったそうで、そのため人手がいると急きょ呼ばれたのが妹のあたし。

こんな暑い日に炎天下の作業を頼まれるなんて、本当に運が悪い。全く、ツイてないにもほどがある。


「まあ、まあ、佐奈(さな)ちゃん」


あたしをなだめるような声が聞こえて振り返ると、お姉ちゃんと同い年で幼馴染、東条朔(とうじょう さく)だった。