11月も終わりになったある日、オフィスで入力作業をしていた私に、竜也が声をかけて来た。


「丸山さん、専務が君のこと呼んでるけど、心当たりって、何かある?」

竜也ったら、やっぱり何も考えずに物事をいう。

あなたに思い浮かばなければ、私に思いつくわけないって。


「専務が?」

真裕からは、何も聞いてない。もちろん、思い当たる節なんか何にもない。


彼に聞いてみようと思ったけど、理由を聞いたところで意味がないと思った。


「どんな用事だかわかんないけど、とにかく行ってみる」


役員室や、秘書室がある最上階のフロアには、一般社員には、縁がない場所だ。
新人のころ、案内されて見学に来て以来かな。

エレベータを降りて、うろうろしていたら、秘書室の女性に専務の部屋まで案内された。