【 愛理:side 】



「よし、我ながら完璧っ!」



陸と龍二くんの2人が校門にやって来るまでの間、カバンの中からハート型の手鏡と必需品のマスカラを取り出して、ご自慢の長いまつ毛をめいいっぱいカールさせていたあたし。


「陸、まだかなぁ?」


陸のことを考えるだけで嬉しくなる。


その時、ツンツンッと肩を誰かに軽く突かれ、笑顔で後ろを振り返ると──・・・



「お待たせっ!」



そこに立っていたのは…1人だけだった。


なんで?


「龍ニくん。陸はどうしたの?」


「アイツは渡部(わたべ)先輩に用事を頼まれて、まだ部室にいるよ。先に2人で行っといてくれって言ってた」


「そうなんだ…」


満面の笑みを見せている龍ニくんとは反対に、あたしのテンション急降下した。


「それはそうと…その顔、正直すぎねぇ?愛理ちゃんは自覚ナシなんだろうけど、オレ…凹んじゃう」