ケータイ小説 野いちご

そして俺は、君の笑顔に恋をする

怒濤の七日間
third day―動揺:爆発







次の日の朝。



「ぎゃーー!!オリオン、てめえーー!!」という工藤の叫び声で黒瀬は目を覚ました。


眠そうに目をこすりながらリビングに向かうと、爪を立てたオリオンと格闘する工藤の姿が。



「工藤さん…何してんの」



おいでオリオン。


黒瀬が呼ぶと工藤の顔に張り付いたオリオンはとことことやって来て足にすりついて甘えてきた。


あからさまな態度の変化に工藤は愕然。


手に持ったネコ缶を見る限り、エサやりの最中にバトったらしい。



「くっ…!オリオンお前、これまで世話してきた俺より黒瀬の方がいいのか…!」


「ニャーー」


「薄情者めっ!エサやらねぇからな!!欲しけりゃ謝れよっバカ!」


「フニャーー!!!」



まるで幼い兄弟のような喧嘩を繰り広げるオリオンと工藤。



「…いつもこうなの?」


「まあな。付き合いが長いんだコイツとは」



あとから聞いた話だが、


オリオンとは五年ほど前から一緒に暮らしているらしい。


アメリカいた頃、捜査官として向かった場所で、親とはぐれ雨に打たれて死にかけていた子猫のオリオンと出会った。


幸い一命を取り留めたオリオンはその日以来工藤とずっと一緒。


毎日、朝から晩までケンカしながら過ごしている。


毎回毎回ケンカ腰なので、自分は嫌われているのではないかと思い一時は他の人に譲ることも考えたが、知人に預けて数日後に帰ってきたのだ。


理由は、一切食事を取らなくなったから。


工藤といた時は終始走り回りケンカばかりで元気だけが取り柄だったのに、ずっと隅で縮こまりエサに一切手をつけなかったという。


信じられなかったが、帰ってきたオリオンは以前とはまるで別ネコのように工藤に甘えた。


工藤に張り付き、片時も離れることはなかった。


まあそれもたった一日で終わり、次の日からは昨日までがウソのようにエサも食べるしケンカもするしですっかり元通りになったのだが。



それからはずっと一緒。


どんなにケンカしても、朝から噛み付かれ、仕事から帰ってきて早々顔をバリバリ引っ掻かれようとも、二人が離れることはない。


大の仲良しなのだった。




今も、工藤と黒瀬が朝食をとっている間、オリオンはとことん工藤に絡む。


足を引っかいたり、膝に乗っかって食事の邪魔をしたり。


工藤はそんなオリオンに怒るが、黒瀬から見ればただ工藤にかまって欲しいだけのように可愛いネコに見えた。




そんな騒がしくもほっこりとした光景から一日が始まる。


だから、すっかり感覚が鈍っていた。


自分が今どんな状況にあるのか、


誰に追われ、命を狙われているのか、


なにも、何も、分かっていなかったのだ。





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