ケータイ小説 野いちご

そして俺は、君の笑顔に恋をする

怒濤の七日間
second day―秘密:盗聴







十三年前


黒瀬凪咲はまだ五歳。




ちょうど兄の誠一郎と一緒に家で留守番をしていた時、電話が鳴り響いた。


受話器をとった兄の表情が真っ青に変わっていく様を、黒瀬凪咲はただぼんやりと見上げていた。









(ん、…)


黒瀬はゆっくり目を覚ます。


見覚えのない天井に、明らかにうちのものよりふかふかで心地の良いベッド。


しばらくして自分が工藤の家に居たことを思い出した。




時刻は午前四時


まだ外は真っ暗。


黒瀬は起き上がり、部屋を見渡す。


すると、寝室の隅にあるソファにもたれて寝息を立てている真妃の姿が目に入った。


あれから、傷の治療をしてくれた真妃。


やけに慣れた手つきで手当てをしてくれた。


尋ねてみると「あ、私一応は医者なの。まだひよっこだけどね」とニコニコしながら答えてくれた。


その後も夕食、お風呂、寝支度までテキパキと手配してくれた。



(寝た後も、ここで警護してくれてたんだ…)



心の中でありがとうと感謝をしながら、黒瀬は立ち上がる。




随分と昔のことを夢で見ていたようだ


正直、父と母の事はよく覚えていない。


いつの頃からか二人の存在は黒瀬の中から消えていた。


最後の記憶は、皆で行った水族館のイルカショー


ぼんやりとしか覚えていないけれど、買ってもらったばかりの赤い服を着て、イルカの前で写真を撮った。


その写真は父や母と一緒にどこかにいってしまったけれど。




(あんな事があったから...思い出したのかな)




髪をかき上げ、小さく息を吐く。


眠る真妃に毛布を掛けて、音を立てないようにして寝室のドアをそっと開けた。


工藤の家は広い。


真妃も言っていたが使われていない部屋がいくつもあるらしい。


玄関から入ってすぐにある広いリビングは一面がガラス張りになっており、東京の街並みが一望できる。


いかにもな高級住宅の一室。


黒瀬は窓のそばに座り、東京の夜の街を見下ろした。




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