電車に揺られ、帰路についた黒瀬達。


まっすぐにマンションに向かわず、買い物をして帰るためショッピング街へ。


それまで緑豊かなど田舎に居たせいか人の多さが余計に目につく。


というか、多すぎて酔いそうだ。


その人込みに黒瀬が突っ込もうとしていたので、工藤は慌てて腕をひく。



「…何」


「……隣を歩いて。一人で行くな」


「でも」


「でもじゃない。人に紛れて襲われることはよくあることなんだ。離れてたら守れない」



今までにない有無を言わせぬ強い声に、黒瀬は体を強張らせて目を丸くする。



「……」


「ほら行くんだろ?」


「…ん。」



固まる黒瀬の背中を押し、工藤は隣を歩く。


今までにない工藤の行動に黒瀬は怪訝そうにちらちらと見上げた。



「なんだよ。俺の顔に何かついてるか」


「…べつに」


「ふっ変なの」



小さく笑う工藤の横顔を見て、黒瀬は黙り込む。


それから二人は無言で人混みの中を歩いていった。