最初、彼女のマスクにしか注目が行かなかったが、よくよく見ると、彼女は僕の学校の女子と同じ制服を着ていた。

そして、具合のことを心配されたのも忘れ、
「東郷高校ですよね?学年は?」
と聞いてしまった。

彼女は戸惑いながらも、
「一年です。」
と答えた。

そういえば、彼女は僕の隣に座ろうとしない。
まあ、座りにくいのも当然か。

それよりも、彼女は一年だと答えた。

………一緒じゃん。

「ごめん。僕も一年なんだけど、君の事知らないんだ。僕はA組なんだけど。」

「私はD組。気にすることないよ。私もあなたの事を知らない。」

「僕は、安田雅。多分、君が僕の事を知らないのも当たり前だと思う。僕は、あまり学校に通ってないから。」

「橋本京。あなたは不登校なの?」

結構デリケートな部分に突っ込んでくる。
初対面だよね?

「まあ、そういうことになるかな。」

「なぜ?」

言葉に詰まる。
これを言ってよいものなのか。
まあ、いいか。

「学校に行く意味が感じられない。あんなことを学ぶ必要性がない。そう思っちゃうんだ。」

「そうなんだ。あなたとは気が合いそうね。リスカしてるの?」

「………え?」

「リストカットをしているかと聞いたのよ。」

「いや、それは分かるんだけど………。急だね。してないよ。」

「ODは?」

僕は正直、ポーカーフェイスを保ち切れていた自信がある。
なぜなら僕は、彼女と同じように大きなマスクをして、口元の笑みを隠していたからだ。

ただ、彼女は鋭かったのだろう。

「あとで、学校で話しましょう。放課後、屋上で。」

女は怖い。