「澪さん、大丈夫?」



ドアの向こうで
心配そうに志津香さんが話しかけてくる




『…ごめんなさい、一人にして』




病院を出た私は
そのまま斗真さんのお宅へ戻った
志津香さんは外出中で
家にいたのは家政婦の美帆子さんだけ

私の姿を見て美帆子さんは驚いて
私に駆け寄ってくれたが
私は大丈夫と言って
間借りしている部屋にこもった


帰宅した志津香さんが
心配して部屋まで来てくれたが
私が顔を出すことはなかった


遅くに帰ってきた斗真さんも
声をかけに来てくれたが
ごめんなさい、と謝るだけ



もう涙は出ない
たくさん、弱音も吐いた
だから、もう大丈夫



あと数日したら、有給休暇も終わる
いやでも会社に行かなくちゃいけない

会いたくなくても
社長には会わなきゃならない



これが…最後だ。