「…海里さん…私、濡れてる…服、濡れちゃいますよ…?」



「いいのいいのー」



「……」



……暖かいなー。



冷えた体に海里さんの体温が染みる。



ふわっと抱きしめられた鼻の先から、甘いマリンの香りがした。



グイッーーー。



体温が離れる。




「この女たらしが!」




腕を後ろにひかれて誰かの大きな背中がそびえ立つ。




「言っとくが妹だからな!」



凛々しい声がリビングに響く。



「大地こわー!」



「うるさい海里!少し黙れ!」




微かなお日様の香り。

『海里が悪かったな』と振り返った顔は焦げ色で、笑った時、白い歯がよく似合っていた。



大地…。海里さんはこの人を大地と読んだ。



大地さん…か…。




「いいえ…大丈夫です…ありがとうございます」



がたいがいい、大地さん。



何かスポーツやってるのかな…?



「海里!!」


恵美さんが海里さんをげんこつする。



「いたっ!手加減してよー!!」



「私の可愛い、さゆりちゃんに、手をだすんじゃないわよ!!」



私、恵美さんのじゃないですケド…。



「「アハハ!」」



響也さんとお父さん!二人して笑ってる。



なんかキャラがかぶるな…。



ふっ、と頬が緩みそうになる刹那。


ぐらーん。



視線の先の二人がグニャリと曲がって見えた。


あれ、私可笑しい…。



なんか、寒い…。



「どうかしたか?」



「あ…いえ。大丈夫です」



「……」



大地さんが心配したように眉を潜めた。