ーーガチャ…ダンッ!
ドアを開くと同時に向こう側のリビングへの扉も勢いよくあいた。
ああ、一難去ってまた、一難。
「さゆりちゃんお帰りーー!!」
鼻をくすぐる薔薇の香りがその場を満たす。
紛れもない恵美さんだ。
「さゆりちゃん、さらに可愛いくなってーー!!」
昨日ぶりですよね?
昨日と今日で可愛さなんて変わりません!
っていうか可愛くなんてないし。
「母さん。落ち着いて」
前回と同じように忠誠に入る響也さん。
「私はいつだって落ち着いてますぅー!」
いやいや落ち着いてないだろ、と二人が思ったのは言うまでもない。
「あの、父は仕事で今日いませんが……」
「あ、いいのいいの!ーーさゆりちゃんに会いに来たのよ」
私!?
ああ、嫌な予感!
「さぁさぁ!レッツゴーショッピング!!」
……やっぱりですか……。
せっかく海里さんから逃げてきたというのに。
「ほら、さゆりちゃん早く着替えてきてー!」
……………………
…………はぁ……
「……分かりました……」
2階に行って自分の部屋で適当な服に着替える。
のんびり階段から降りてきたら、もう玄関でスタンバイしている二人に出くわした。
そして恵美さんの第一声がこれ。
「さゆりちゃん……ダサい」
恵美さん、はっきり言いますね。
「出かけるのにジャージはないでしょう!?」
「楽じゃないですか」
「いやー!!隣歩きたくない!他に服ないの?!」
「ないです」
「もったいない!もったいないわー!!女捨ててる!」
隣で騒ぐ恵美さんを見て苦笑いする響也さん。
「そろそろ行かないと時間なくなるよ?」
「はっ!そうね!行きましょ!」
恵美さんに引っ張られ、ドアを開けると。
えっ!ナニコレ!
黒くて長いもの。家の前の道路がその物体に封鎖されてる。
も、もしかして……!?
「さゆりちゃん!乗って乗って!!」
「り、リムジンですか…!?」
「え…そうよ?」