口からお米がこぼれても、おかまいなしにお粥をかきこむ。


その食べっぷりに唖然としてしまったが、何日も食べていない可能性があると言うことがようやくわかった。


「おかわりあるけど」


そう言うと男は空になった茶碗をすぐに差し出してきた。


「すぐに温めるからちょっと待ってね」


お粥を温めている間、あたしはインスタントの味噌汁を作って出してやった。


男はそれもあっという間に飲み干してしまった。


「そんなにお腹が空いてたんだね……」


「覚えてない」


男は二杯目のお粥に手をつけながらそう答えた。


さっきよりも随分としっかりした口調になっている。


「そっか……」


なんにせよ、食べやすいお粥にしたのは正解だった。


男は二杯目を食べ終えて大きく息を吐き出した。


「少しは落ち着いた?」


「あぁ」


男は力強く頷く。


そして改めてキッチンの中を見回した。


自分のおかれている状況をしっかりと把握するためだろう。