今日も、オフィスに我久の姿はない。

休みの理由は遠出の取材ということになっているが、都内の情報ばかりを扱うこの雑誌社で遠出とは、いかにも怪しかった。

特に事情を知っている香織と楠井はすぐにその怪しさに気がつき、日和に話を聞こうとした。しかし、元気のない日和を気遣ってやめた。

屋上にもあまり行かなくなった日和を、二人が心配して気にかけてはいるものの、話しかけても大丈夫の一点張りだった。

日和のいない屋上で、二人は物足りなさを感じていた。

「どうしたんだろうね。

あーあ。日和が屋上に来ないから、花も枯れちゃってる。代わりに世話した方がいいのかな」

「天祢さんと何かあったんじゃない?」

「やっぱそうなのかな。
先輩がどこに行ったのかも気になるよね。
一言言ってくれたっていいのにさー。

てか香織、もしかしてこの状況にチャンスを感じてる?」

「馬鹿言わないでよ。

たとえチャンスでも、今ここに天祢さんがいなきゃ意味ないじゃない」

そう二人が話すように、我久と日和の関係には、見えない亀裂が生じつつあった。

しかしそれは日和が感じていること。

ここ数日忙しく動き回っている我久には、日和の変化まで気が回っていなかった。