その扉を開くと外からの温かい風が一気に吹き込んできた。その風の強さに負けじと目を開けると、見たかとの無い世界が広がっていた。


花壇には色とりどりの花が咲き誇り、空中を優雅に舞い散るのは遅咲きの桜の花びら。吹き抜ける風は優しい花の香りに満ちている。


空からはじりじりと夏の近づきを感じさせる陽射しが降り注いでいるというのに、この場所では儚く揺れるみずみずしい花たちがその暑さを和らげてくれる。


そんな場所で一人座って花を眺めるのは、白いワンピースに身を包んだ一人の女性。淡い桜色の長い髪を靡かせ、花たちに囲まれる彼女の姿は、まるで地上に舞い降りた妖精のよう。


ガチャンと扉閉まった音に気付き、彼女は顔をあげる。


それが彼、天祢我久が初めて柊日和と目を合わせた瞬間だった。