「眠れないの?」


「ん、なんとなくな」


「ねえ、よく眠れる方法知ってる?」


「なんだよ」


ベッドの中、もそもそと動いて修斗に抱きつく。


「私を抱きしめるとね、よく眠れるんだよ」


「なんだそれ。お前が抱きつきたいだけだろ?」


そう言って呆れたように笑いながらも、修斗は私をぎゅっと抱きしめてくれた。


「珍しいね。修斗が試合前に眠れないなんて。もしかして、緊張してる?」


「まあ明日で最後だし、案外そうかもな」


「そっか」


明日の試合を最後に、修斗はサッカー選手を引退する。


海外から戻って来て5年、40歳の節目に修斗は引退を決めた。


現役最後は日本で過ごしたいと思っていた修斗は、数あるオファーの中、サッカー選手としてスタートを切ったFCウイングに活動場所を移した。


今シーズンもレギュラーで出場し、多くの得点を決めている。