あの後、話を聞いたミキは優しく私を抱きしめてくれた。
そしてふみくんが私の隣に座らないよう朝まで横にいてくれた。

「よし!温泉でも行こっか!」
次の日は学校が休みで、ミキが温泉にでも行って気分転換しようと言ってきた。
「…それもいいかもね!もうふみくんに会うこともないだろうし気にしてても時間の無駄だしね…!」
ふみくんにされた事を思い出すと寒気がしてゾクッとする。
だから思い出さないためにも自分に言い聞かせる。
しょうがない。
昨日の事はしょうがないことなんだ…って。
「…大丈夫?私が前もってふみくんいるの言ってなかったせいで…ごめんね。」
まあ、うん。その通り、と少し思ってしまった。
「大丈夫だよ!それより温泉行くんでしょ?どこ行こっか!」
でも、ほんとに悪いのは私。
あそこで油断して寝なければあんな事にはならなかった。
だからミキに心配をかけてはいけない。
そう思い、必死に笑顔を作る。
「うん!どこがいいかな〜♪」
ふとスマホに目をやるとメールが来ていた。
『昨日あの後大丈夫でしたか?』
岩淵先生だった。
ミキが一緒なのを知っているからか悪魔口調ではなかった。
「悪魔の時でもちょっとくらいはいいところはあるんだけどな…。」
「ん?悪魔?」
また心の声が漏れる。
「あ、岩淵先生の話。」
「岩淵先生が悪魔?なんで??」
あ、しまった。
助けてもらったのはミキに言ったけど、悪魔なのは言ってない。てか、言えない。
「あー…えっと、いつも常に優しいからこそ悪魔みたいな本性してたりなんてー。はは…。」
我ながら変な言い訳。
というより、ちゃんと日本語になってるかすらもよく分からない。
「突然どしたの?変な亜子ー。まあ昨日あんな事あったんだから変になってもおかしくないよねー。」
「あー!もう!その話終わり!昨日の話はなし!!さっきネットでいろいろ温泉調べたからその話しよ!!」
無理矢理だとは思ったが、もう昨日の話はしたくなかった。

『昨日はありがとうございました。 今日は気分転換にミキと出かけることにしたので、なんとか大丈夫そうです。』
岩淵先生にはそうメールを返し、2人で温泉の準備をした。

ミキと温泉に行くのは正解だった。
温泉に向かうまで道が分からず、たくさん笑った。
温泉についてからも楽しすぎてあのことを考える隙もなかった。