教室がざわめく。
その中で私は声を失った。
どうして。
意味がわからない。
なんで。
まだ抱きしめられた理由聞いてないのに…。
岩淵先生の気持ち聞いてないのに…。
元気な笑顔しか覚えてないよ。
嘘だよね…。
先生の顔を見たが、どう見ても本当みたい。
あまりにも突然すぎて信じられない。
「…岩淵先生は1年程前から重い病気を患っておりました。ですが、治療よりも最後まで教師をやり抜く道を選びました。」
何それ。
言ってることはかっこいいけど、ほんとにそんなことしちゃったら、かっこいいじゃんって笑い合うことすらできないじゃん…。
何それ。ほんと意味わかんないよ。
学校の中歩いてたら、ひょこっと
「亜子さん、ちょっといい?」
って顔出すんじゃないの?
もうほんとに会えないの?
気づくと涙が溢れ出し、止まらなくなっていた。
周りも皆もわんわん泣き、ほんとに死んでしまったんだなと思い知らされた。
よく考えたら、岩淵先生、痩せてたな。
やつれてたな。
なんで、体調悪いって気づかなかったんだろ。
私よりも辛いこといっぱいあったはずなのになんで私なんか助けたの?
溢れ出した涙は止まることを知らず、どんどんどんどん目からこぼれ落ちていく。
「亜子さん、ちょっといいかしら?」
そんな私を学年主任の先生は教室から連れ出し、ある封筒を渡してきた。
「これって……。」
岩淵先生の遺書だった。
「どうして私に…?!」
「きっとそれほど大切な生徒さんだったのね。」
そう言ってハンカチを差し出してくれた。
涙は更にこぼれ落ち、鼻だってぐじゅぐじゅで汚い顔をしていたと思う。
それでも涙を止めることが出来なかった。

私は授業どころではなく、学校を早退した。
そして、家に着くと、あの遺書を開いた。