僕は 太陽に 事細かく段取りを聞き 待ち合わせである 駅前の改札口に 彼女を迎えに行った。



彼女に会える喜び


そして


申し訳ないと思う気持ち



それらが僕の頭の中で交差しあった。



駅前に近くにつれ 僕の鼓動が激しくなる。


このまま 心臓が飛び出すのではないかと 感じるぐらい

僕の胸は高鳴っていた。


そんな 緊張しまくりの 僕の腕を誰かが組んで来た。


《遅いぞ♪

たー君♪》

僕が 声のする方を見ると 腕にしがみつき僕を見上げる日向さんがいた。


≪可愛い…≫


僕は 思わず呟いた


と、


同時に 日向さんの 屈託のない笑顔を見ていたら 罪悪感からか 太陽に強い怒りも感じた。



≪日向さん ご免なさい‼≫


僕は 彼女の腕を振り払うと 頭を深々と下げた。


《えっ‼

えっ‼


彼女は 僕の顔をまじまじと見る。



《………たー君じゃ無いの?

まさか…

月狼君?》



≪ご免なさい…

本当にごめんなさい…

太陽は 急用が出来て…≫


僕は 気の利いた嘘がつけなかった…


だけど…

そんな彼女は 僕を見て 手をとりにっこりと微笑んだ。


《たー君の代役さん 今日はお願いします。》



この微笑みは 嬉しくもあるが 僕の物じゃなく 太陽に向けられた物…

複雑であり 心が痛い…


《月狼君…

あたしと デートするの嫌かな…》


彼女は 俯きながら言った。


≪そんなこと無いよ…≫

僕は慌てて首を振り 彼女に微笑み返した。


≪ただ…

僕何かでいいのかなって…≫


僕は 頭をなでながら言った。


《いいの… この前のお詫びも兼ねてだから…》


≪この前のお詫び…≫


そう 数日前

太陽の浮気が原因で 僕が太陽と間違われ 彼女にハイキックを喰らった事件のことだ。



彼女は 僕の手をとるとしっかりと握り歩きだした。


僕は 嬉しくもあり 同時に女の子と手を握り歩いた事の無い僕は とても恥ずかしくあった。



ただ…



彼女の笑顔はとても可愛かった。


だけど…


その笑顔からは


なぜか


寂しさを感じた。