午後1時。俺は作戦立案のために山本長官の自室へ向かっていた。

ノックをして部屋に入ると、まだ長官しかいなかった。

「おはよう、吉田君…いや、吉田中佐。昨日はよく眠れたかな?」
中佐という呼ばれ方に慣れていないのか、俺は少し戸惑ってしまった。

「はぁ、おかげさまで」

「それはよかった。ところで、参謀長と主任参謀が来る前に聞きたい事があるのだが」
なんだろう。何か悪い事でもしたかな?と首を傾げていると、長官が続けて言った。

「ミッドウェー島を巡る戦闘は、日米どちらが制するのかね?」
鳥肌が立った。これを教えてしまえば、もう後戻りは出来ない。日本を勝利に導くしかなくなる。

「この戦闘で...日本は大敗北を喫します」
俺は続けた。
「我が軍の被害は、空母4及び重巡1沈没、重巡1大破、駆逐1中破。 航空機搭乗員を含め合計で3057人が戦死します」

山本長官の表情はピクリとも変わらなかった。予想がついていたのだろうか。

俺はさらに続けた。
「対する米軍の被害は、空母1、駆逐1沈没 。戦死者は307人です」

長官は何か考え込んでいるようだった。
「ふむ...やはり作戦を1から見直さねばならぬか...」