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彼の隣は心地いい。

7畳という狭い部屋の中で寄り添うように座り、私と彼は思い思いの時間を過ごす。

彼はいつものように私には理解のできないような分厚い本を読み、私はスマホの料理サイトとにらめっこ。

冷蔵庫には野菜もあるし、さっぱりと野菜をたっぷりのせた冷製パスタなら作れそうかな……。

よし頑張ろうと気合いを入れ、レシピに目を通し始めた時。


「咲ー世っ(さよ)」

「え? きゃ……っ」

「あー、ふわふわ。いーにおい。気持ちいー」


彼……縁(えにし)が私の体に適度な筋肉のついた長い腕を絡ませてきて、甘えるようにして私の首筋に顔を埋めてきた。


「もう、縁ってば甘えん坊? ……ふふっ、やだ、くすぐったいよ」


やわらかい唇が私の首に軽く吸い付き、私はそのくすぐったさにくすくすと笑みを漏らしてしまう。

ちゅ、ちゅ、と私の肌に唇を落としながら、時折、縁は私の目を上目遣いで見つめてくる。

その瞳は熱っぽくて、私の熱も上げてしまうほどセクシーだ。


「ね、咲世、しよ?」


……やっぱり来た。縁の甘いおねだり。

縁に触れられるのは大好きだけど、今はダメ。

もうそろそろご飯を作らないといけない。

明日は朝一から講義があるし、午後には大事な講義が待ってるから。


「ダーメ。そろそろご飯作らなきゃ。縁も明日は朝から講義あるんだよね?」

「……やだ。する」

「えに、んっ」


私の拒否の言葉に拗ねた顔をした縁が私の唇をぱくっと塞いできた。

縁の胸元をぐっと押して抵抗を見せるものの、すぐにとろとろの熱に溶かされてしまう。

私は抵抗するのをすっかり諦め、縁の首裏に手を伸ばして抱きつき、縁がくれる甘くてとろけそうなキスに酔いしれる。

縁のキスはすごく気持ちいい。

とは言っても、私にとっては縁がはじめての彼氏で、他の人からされるキスがどんなものかなんて知らないんだけど。

でも、そんなの知らなくていい。

私にはこれからもずっと、縁だけだから……。