ピーンポーン

電話がきてから30分後に鳴ったチャイムに、あたしは玄関へと足を向かわせた。

ガチャッとドアを開けると、
「夜分遅くに悪かったな」

社長だった。

「狭いところで申し訳ありませんが、おあがりください」

そう言ったあたしに、
「お邪魔します」

社長は会釈をすると、家の中へと足を踏み入れた。

案内するようにリビングに入ると、それまで床のうえに座っていた兄が立ちあがった。

「初めまして、兄の藍田春弥です。

妹がいつもお世話になっております」

兄は自己紹介をすると、社長に頭を下げた。

「『小野製作所』の代表取締役社長の小野直孝です、初めまして」

社長も自己紹介をすると、兄に頭を下げた。