家に帰ると、
「おかえり」

いつものように、彼が迎えてくれた。

「ただいま」

あたしは返事をすると、パンプスを脱いで中へと足を踏み入れた。

「今日は遅かったな」

そう声をかけてきた彼に、
「パスワードを変えられてて、それに手間取ってた」

あたしは答えると、テーブルのうえにカバンを置いた。

「ああ、そうだったのか」

彼は納得をしたように首を縦に振った後、
「今日はハヤシライスだから温めてくるよ」

「うん、ありがとう」

お礼を言ったあたしに彼はキッチンの方へと足を向かわせた。

置いたカバンから化粧ポーチを取り出すと、そこからUSBメモリーを出した。

あたしが普段使っているものではなく、社長から渡されたものだ。