有理の言葉を思い出す。
坂瀬くんも、電車通学だということ。

急げば、間に合うかもしれない。

私は精一杯走る。
正直走るのは得意じゃないけど、今はそんなこと、どうだってよかった。

そして見つけた、坂瀬くんの姿。

もう少しで信号に差し掛かるところを、坂瀬くんはフラフラと歩いていた。

信号が点滅する。
よかった、坂瀬くんはきっと、この信号には間に合わない。

そう思って、少し速度を落とした。

しかし、坂瀬くんは赤信号になったにも関わらず足を止めない。

どんどん、進んでいく。

そして、車が来ているのが見えた。


「坂瀬くん!!」


気づかないうちに、私は坂瀬くんの名前を大声で叫んでいた。

坂瀬くんはそれに気づいて、振り返る。

足を止めた坂瀬くんの方に、私は全速力で走る。


「早く!早くこっちに来て!危ない!」


坂瀬くんはまだ車道にいる。

私は最後の力を振り絞って、坂瀬くんの元に走った。