『お前はすぐに諦めるんだな』

そう言われて、私は何も言えずに濁った夜空を見上げた。刺すような鋭い視線を感じても、気付かない振りをして。


「それで、いいのかよ?」

「.....」

「あいつに何も言わないままで」


彼があの人のことを言うから。私の頭は、またあの人で埋め尽くされる。

私はあの人が好きだった。バカみたいに優しくて、温かいあの人を。どんな時も味方でいてくれて、悲しい時はいつも側にいてくれた。


そんな私の好きなあの人は、私の姉の恋人で。そんな二人は、もうすぐ結婚するらしい。