『明日の午後、暇?』





そんなメールがあったのは、昨日のことだった。




送り主はつきあって約4年が経つ彼女からで、僕はすぐさま返事をし、3時過ぎに会う約束を交わした。





そして今、まさに待ち合わせしている最中で駅前に設置されてある時計台の下で待っていた。





あと、10分か。




思ったよりも早く着きすぎてしまったみたいで、僕は肩から斜めに掛けている鞄から兄貴に半ば強引にオススメされた小説を取り出す。




まだ序章しか読んでいないからどんな話か、わくわくしていたのだけれど、






「楓純!」






彼女の、谷川凜菜の声に遮られてそれは中断させられてしまった。




笑顔で駆け寄ってくる凜菜に、僕も微笑み手を振ると、再び小説を鞄にしまい数歩だけ前へと出る。





「楓純、待った?ごめんね」

「いや全然だよ…で、どこいく?」

「うーん、まずは…っていうか今日は喫茶店でいいかな?」




考え込むそぶりで僕を見る凜菜に、僕は思わず聞き返した。





「え?」

「ごめん、レポートとかも終わってなくて…でも、楓純に会いたくて」



凜菜の言葉に、僕は嬉しくて思わず頬が緩む。

レポートで忙しいのに…僕に会いたいと思って実際に会いに来てくれるなんて。



…可愛い。




僕はたまらなく、凜菜を抱きしめたくなった。



喫茶店に行ったあとは…僕ん家に来たりしてくれないかな。




さすがに人前じゃ、抱きしめられない。





「いいよ」

「じゃあオススメのカフェ屋さんがあるの」

「うん、行こっか」





さりげなくそっと、凜菜の手を掴んで甘やかな笑みを彼女にみせると、



凜菜も僕の笑顔に連られて、ふにゃっと笑うと「こっち」そう言って歩き出した。






いつまでも続く。