胸をいっぱいにしてしまうほどのこの想いを全て吐き出させたらと思う。

全部、全部、ありったけの気持ちを全て伝えることができたら、きっとこの世に未練なんて少しも残さず消えることができるのに。

下校しながらそんなことを話したら、花音(かのん)は訳が分からないといわんばかりにむっと怒ったような顔をした。


「伊月(いづき)、あんた何ばかなこといってんの」

そんなことより来週は定期テストでしょ、と言う。

確かにその通りで、僕たちの第一課題は定期テストをどう乗り切るかというところにかかっているわけだけど。


「そんなに雪奈(ゆきな)が気になるの?」

「言うなよ、それを」


顔が赤くなりそうなのを誤魔化すようにそう言うと、「ふーん」と花音はこれは面白いとでも言いたそうな顔をして笑った。

茶色のセミロングがふわりと揺れて、花音はそれを右耳に掛けながら呟くようにこう言った。


「本当に好きなんだ」


僕は顔を逸らした。

間違っていないから否定はしないけれど肯定したらそれこそ花音の思うつぼだと思ったのだ。


「だいたいさ、花音はこの話してて辛くないの?」

「何が?」


「だってこの前、僕は、花音を振ったんだよ?」