朝焼けがキュリオの頬を照らし、視界の端に輝く日の光を確認した彼はゆっくり立ち上がった。



"いけませんっ!今宵は男子禁制でございます!!女人にとって二月十三日は聖なる日!日が明けるまでは姫様にお会いになってはなりません!!!"



「夜は明けたな…」



この国の王であるキュリオが女官や侍女の言いなりになる必要はどこにもないが、強行すれば溺愛しているアオイの心が離れてしまうような気がしてならなかったのだ。


キュリオは厚手のガウンを羽織ると、とある場所へ急いだ。


そして…





「何だこれは…」






アオイの部屋の前で女官や侍女の残した張り紙を見て驚くキュリオだが、夜の明けた今はもう必要ないと判断し、強引に扉を推して中に入る。




―――ガチャッ




「話を聞かせてもらおうかアオイ」




普段ノックせずに入室するなど有り得ないキュリオだが、大人しく引き下がった裏では随分我慢していたことが伺える。



「……」



しかし彼の問いに返答はなく、ほのかに香る甘く優しい空間を静寂が包んでいた。