―――それからしばらくして…手際の悪さを愛情でカバーしていくアオイのチョコは初めてにしては上出来であり、残すところ成形のみとなっていた。



その頃…キュリオの自室では―――。



「これだけ探して手がかりさえ見つからないとは…」



大量の歴史書をデスクに積み上げ、その中心で大きくため息をついたキュリオが最後の一冊を手にとる。



「…この字は…」



豪快な中に繊細さを感じさせる美しい書体には見覚えがあった。




「ディスタ王のものか…」




(歴代の王の記したものは厳重に管理してあるはずだが…いつの間に紛れ込んだ…?)




貴重な当時の悠久を知るうえで、歴代の王たちが残した言葉はとても重要なものとされている。



特にこの<ディスタ王>に関してはセシエルと同じく当時第一位の王であった事も関係しているのか、五大国の王たちの様子や自身のことが詳しく残されており、彼の素性が垣間見ることが出来たため厳格な王であったと推測できた。







―――そしてキュリオは知らない。

<ディスタ王>の時代で何が起きていたのか…物語はまだ始まったばかりだからだ―――。