年に一度のバレンタインデーを控えたこの日、悠久の城では―――。


まだ日も登らぬ暗がりに部屋を抜け出してきたアオイの手には分厚い料理本が握られている。

そして自室の扉に"男子禁制!!"と貼られた紙を見て、協力してくれた女官や侍女たちの優しさに感謝しながら笑みをこぼした。






(たくさん作って皆にもお礼しよう…)


朝起きしたアオイは料理人と時間がかぶらぬようまだ暗いうちから準備を始める。




(早寝したおかげでちゃんと起きる事が出来たし…あとは失敗さえしなければ!)