「どうしたの?浮かない顔をして」

お昼時間。
あまり食欲もないが、午後の仕事の為に無理矢理総菜パンを頬張っていた。
その時に声を掛けてきたのは、事務の秋元さん。
かわいらしい布に包まれたお弁当を片手に、私の席の向かいに立っている。

「・・・そう見えますか?」

「ええ。遠くでも分かるくらい。向かいいい?」

「・・・どうぞ」

髪を耳にかけながら座るとお弁当を広げる。
色とりどりの見た目でも美味しそうなおかずが目に入った。

秋元さんの子供は、そう言えばもう中学生だったっけ。
子供も同じお弁当なのかな。
・・・美味しそう。こんなの私が作れるんだろうか?

どうも"結婚"と言う言葉が身近になった今、何かにつけてそう考える自分がいる。
家の事が出来るのだろうか、支えていけるのだろうか、子供が出来たら育てられるのだろうか、とか。
こういった事も全て、ゆっくりと付き合いながら考えていくものだと思っていた。
だけどそれを考える余地もなく、もう目の前に結婚ってものを突きつけられていて。

あれから岡田さんとは連絡は取っているけど、当たり障りのない話で終わっていた。
会ってもそれは変わらない。聞こうと何回か試みたが、いつも話を逸らされてしまう。

色んな事がぐるぐる頭の中を回っている。
いい歳だし、別に結婚を考えるのは変じゃない。
それは分かってる。だけど・・・。